釣った魚のアニサキス対策は、目視での確認に加え、条件を満たす加熱または冷凍を行うことが基本です。新鮮な魚でも、身にアニサキスがいることがあります。「釣ったばかり」「虫が見えない」だけでは、生で食べる安全性を判断できません。

  • 加熱するなら、魚の中心まで60℃で1分以上、または70℃以上にする。
  • 冷凍するなら、魚の中心まで−20℃以下にし、その状態で24時間以上保つ。
  • 釣った後は速やかに冷やし、できるだけ早く内臓を取り除く。内臓は生で食べない。

家庭で冷凍温度や中心まで冷えた時刻を確認できない場合は、アニサキス対策の冷凍条件を満たしたと考えず、十分に加熱する料理を選びましょう。

アニサキスは身にもいるため、見た目だけでは防げない

アニサキスは寄生虫の一種です。魚介類にいる幼虫は、白い糸のような姿で、長さはおよそ2〜3cm。渦巻き状になっていることもあります。

サバ、アジ、イワシ、カツオ、サケ、イカなど、さまざまな魚介類で見られます。魚種名だけで「この魚なら大丈夫」とは判断できません。

幼虫は主に内臓に寄生しますが、身にいる場合もあります。また、魚が死んだ後、時間の経過とともに内臓から身へ移動することがあります。

内臓を早く取り除くのは、この移動のリスクを抑えるためです。ただし、内臓を取ることや血抜きをすることだけで、身にいるアニサキスを除けるわけではありません。

釣り場から帰宅までに行う処理

  1. 持ち帰る魚は速やかに冷やす。十分な氷とクーラーボックスを用意し、魚を常温で放置しないようにします。
  2. 衛生的に作業できる場所で、できるだけ早く内臓を取り除きます。内臓は生で食べないでください。
  3. 内臓を扱った手、包丁、まな板を洗い、処理済みの身や、そのまま食べる食品に触れる前に清潔にします。
  4. 帰宅後も冷蔵で保管し、調理までの時間を短くします。

釣り場に清潔な作業場所がない場合は、無理にその場でさばかず、保冷を徹底して早く持ち帰ります。取り除いた内臓を釣り場に捨てないことも大切です。

氷の準備や帰宅後の扱いは、釣った魚の持ち帰り方で確認できます。保冷は鮮度や衛生を保つために必要ですが、冷蔵や氷締めはアニサキスを死滅させる処理にはなりません。

加熱は表面ではなく、魚の中心の温度で考える

厚生労働省が示すアニサキスの予防条件は、60℃で1分、または70℃以上の加熱です。家庭で調理するときは、魚の中心までこの条件を満たす必要があります。

表面に焼き色が付いても、厚い切り身の中央が生なら不十分です。たたきや表面だけをあぶった料理も、内部が生のままでは対策になりません。

厚い切り身は小さく切る、煮魚は中まで火を通すなど、加熱むらを減らします。確認には食品用の中心温度計を使うと判断しやすくなります。

ほかの食中毒菌への対策も考え、家庭では中心温度75℃で1分以上を目安に十分加熱すると実用的です。これはアニサキスだけの死滅条件とは別の、一般的な加熱調理の目安です。

冷凍は「冷凍庫に24時間入れた」だけでは判断しない

厚生労働省が示すアニサキス対策の冷凍条件は、−20℃で24時間以上です。重要なのは、冷凍庫の設定だけでなく、魚全体がその温度になっていることです。

大きな魚を丸ごと入れたり、切り身を重ねたりすると、中心が冷えるまで時間がかかります。冷凍庫に入れた瞬間から24時間数えるのではなく、中心まで−20℃以下になった後、24時間以上保つ必要があります。

家庭用冷凍庫は、機種や設定によって−20℃以下を保てない場合があります。扉の開閉や詰め込み方でも温度が変わるため、取扱説明書や庫内温度を確認してください。ただし、庫内の温度を測っただけでは、魚の中心温度まで確認したことにはなりません。

例えば、−18℃設定の冷凍庫で一晩凍らせただけでは、この条件を満たしたとはいえません。薄い切り身に分けると冷えやすくなりますが、それだけで温度と時間の確認に代えることはできません。条件を確認できないときは、生食せず、中まで十分に加熱してください。

解凍は冷蔵庫で行い、常温で長時間置かないようにします。冷凍しても、すべての食中毒リスクがなくなるわけではありません。

目視は補助として行い、酢や塩に頼らない

さばいた身は、明るい場所で表裏と切り口を確認します。腹側の身もよく見て、白い糸状のものがあれば取り除きます。

ただし、身の内部にいる幼虫は見落とすことがあります。1匹取り除いても、ほかにいないとは限りません。目視は加熱・冷凍と組み合わせる確認作業です。

処理・食べ方アニサキス対策としての注意
酢締め・塩締め通常の料理で使う酢や塩では死滅させられない
しょうゆ・わさびを付ける通常の使用量では死滅させられない
表面だけをあぶる中心が生なら対策にならない
細かく切る・よくかむ幼虫を確実に傷つけられるとは限らず、予防法として頼れない

釣ったサバをしめサバにする場合も、酢に漬ける工程とアニサキス対策は別です。冷凍条件を満たせるか判断できなければ、味噌煮や竜田揚げなど、中まで加熱する料理に切り替えましょう。

食後に強い腹痛が出たら、食べた魚と時刻を伝える

アニサキスによる食中毒では、魚介類を生や加熱不十分な状態で食べた後、強いみぞおちの痛み、吐き気、嘔吐などが出ることがあります。食後数時間で起こる場合もあれば、腸に寄生して後から腹痛が出る場合もあります。

強い腹痛が出たら、自己判断で我慢せず、早めに医療機関を受診してください。「何の魚を、いつ、どのように調理して食べたか」を伝えると診療の手がかりになります。腹痛の原因はアニサキスとは限らないため、自分で決めつけないことも大切です。

食後にじんましんが出た場合も、速やかに医療機関へ相談してください。息苦しさや意識が遠のく感じなどがある場合は、119番で救急車を呼んでください。

アニサキスに対するアレルギーは、加熱・冷凍した魚でも起こることがあります。加熱・冷凍による幼虫の死滅と、アレルギーの予防は別です。過去にアニサキスアレルギーを疑われたことがある人は、生食を避ければ大丈夫と判断せず、食べてよい魚や調理方法について医師に相談してください。