釣った魚は、持ち帰ると決めたら速やかに冷やし、帰宅まで低温を保ち、家に着いたら下処理します。クーラーボックスに入れるだけでは冷えません。魚を冷やすための氷と、帰宅まで冷たさを保てるだけの保冷力が必要です。
血抜きなどの処理に時間をかけて、魚を常温に置き続けないようにしてください。冷やせる量を超えて持ち帰らないことも大切です。
持ち帰りに必要な道具と出発前の準備
- クーラーボックス:魚と氷が無理なく収まり、ふたが閉まるサイズを選びます。
- 氷:魚の周囲に配置しやすい砕いた氷と、溶けにくい大きな氷を組み合わせると便利です。
- 食品用の袋:魚を小分けにし、溶けた水や釣り餌との接触を防ぐために使います。魚のひれなどで破れにくいものを用意します。
- 魚ばさみ・プライヤー:魚を保持し、針を外すための道具です。使う場合も、とげや歯には触れないようにします。
- 手洗い用の水・石けん:魚や餌を扱った手を洗うために用意します。
出発前に氷などでクーラーの中を冷やしておくと、現地での保冷に役立ちます。必要な氷の量は、気温、釣行時間、魚の量、クーラーの保冷性能で変わります。暑い日や帰路が長い日は余裕を持って用意し、途中で氷を補充できる場所も考えておきます。
凍らせたペットボトルは保冷に使えますが、置き方によっては魚との接触面が少なくなります。魚全体を素早く冷やすには、砕いた氷などを周囲に配置するほうが扱いやすいでしょう。保冷剤やペットボトルを入れただけで安心せず、魚全体が冷える配置にしてください。
釣れたら、魚を安全に扱って速やかに冷やす
食べられる魚か確認してから持ち帰る
魚種や食用としての安全性が分からない魚は、食べるために持ち帰らないでください。針を外すときは、毒のあるとげや鋭い歯にも注意が必要です。知らない魚を素手でつかまず、魚ばさみなどで保持し、プライヤーで針を外します。安全に扱えない場合は、無理に触らないようにしてください。
とげに注意が必要な魚については、アイゴ・ゴンズイ・ハオコゼの見分け方と注意点も確認してください。
血抜きは冷却の代わりにならない
血抜きは、魚の血を排出する処理です。魚種や調理方法によっては、臭みを抑えるために行います。ただし、血抜きをしても、常温に置けば鮮度は落ちます。
処理に慣れていない場合は、刃物を使う作業を無理に行わず、冷却を優先します。血抜きをする場合も、常温のバケツに長く放置せず、処理後は速やかに冷やしてください。
小魚はまとめすぎず、大きな魚は全体を冷やす
魚の中心まで冷やすには、冷たい氷や水が魚の周囲に届くことが重要です。魚を山積みにすると、内側の魚が冷えにくくなります。
アジなどの小魚を持ち帰る場合
小魚は、飲用できる水で作った食塩水と氷を使い、冷たい氷水で全体を冷やす方法があります。港の水は見た目だけで衛生状態を判断できないため、冷却用の水として使わないでください。
魚を入れた後も氷が残るように調整します。十分に冷えたら水を切り、食品用の袋に小分けにして、氷とともに保冷します。袋の中で魚を厚く重ねすぎず、追加するたびに氷が足りているか確認してください。
大きめの魚を持ち帰る場合
魚を食品用の袋に入れ、空気をできるだけ抜いて口を閉じ、氷が上下や側面に当たるように置きます。袋越しでも、氷との間に大きな隙間があると冷えにくくなります。
大きな魚は中心まで冷えるのに時間がかかります。頭や尾だけが氷に触れる状態は避け、魚全体がクーラーに収まるようにしてください。魚を押し込んでふたが浮く場合は、容量が足りません。
溶けた水や重い氷で身を傷めない
袋に入れていない魚を、氷が溶けた真水に長く浸けるのは避けます。身が水っぽくなる原因になります。冷却後の保冷では、袋を使って溶けた水との接触を防ぎ、重い氷を魚の上に無理に積んで身をつぶさないようにします。
帰宅まで保冷を続けるコツ
- クーラーは日陰に置き、ふたの開閉を減らします。
- 飲み物は別に保冷し、魚用のクーラーを何度も開けないようにします。
- 釣り餌は別容器に入れ、持ち帰る魚や冷却用の氷・水と接触させません。
- 魚を追加したときや帰る前に、氷が残っているか確認します。
- 帰路は寄り道を減らし、高温になる車内にクーラーを長く放置しません。
魚は4℃以下を目安に保冷します。温度計があれば、クーラー内の温度を確認できます。ただし、庫内が冷たくても、入れたばかりの魚の中心まで冷えているとは限りません。氷が残っているかだけでなく、魚全体が冷える配置になっているかも確認してください。
氷がなくなり、魚もぬるくなっていた場合は、冷やし直せば安全に戻るとは考えないでください。どのくらいの時間、どのような温度に置かれていたか分からず、安全性を判断できない魚は食べないでください。
帰宅後は、下処理して冷蔵または冷凍する
帰宅したら、クーラーを玄関に置いたままにせず、魚を取り出して処理します。すぐに作業できない場合は、氷が十分ある状態で保冷を続けるか、魚を清潔な容器や袋に入れて冷蔵庫へ移してください。
- 手と道具を洗う。包丁、まな板、作業台を清潔にし、ほかの食品との接触を避けます。
- うろこ・えら・内臓を取り除く。魚種と料理に合わせて処理し、内臓をつぶして身を汚さないようにします。
- 必要な部分を流水で短く洗う。腹の中の血や汚れを落とし、水に浸けたままにしません。周囲への水はねにも気をつけます。
- 水分を拭き取る。清潔なペーパーを使い、表面と腹の中の水気を取ります。
- 小分けにして保存する。冷蔵する分は清潔な容器や袋に入れます。すぐに食べない分は、ラップと保存袋で包んで早めに冷凍します。
一度に処理しきれない場合は、作業する分だけ取り出し、残りは保冷を続けます。冷蔵・冷凍のどちらも、保存前に常温で長く放置しないことが大切です。
魚を扱った後は、手、包丁、まな板を洗い、道具や作業台は必要に応じて消毒します。生魚に使った道具を、そのままサラダなど加熱しない食品に使わないでください。
「新鮮なら刺身で安全」とは限らない
冷却は鮮度を守る方法であり、寄生虫や毒を取り除く方法ではありません。アニサキスという寄生虫は、見た目が新鮮な魚にもいることがあります。内臓を早く取り除くことは対策の一つですが、それだけで生食の安全を保証できません。
家庭で冷凍したというだけでも、寄生虫対策に必要な温度や時間を満たしたとは限りません。食用として安全な魚で、適切に低温管理できていても、生食の安全性を判断できない場合は、中心まで十分に加熱する料理を選んでください。
また、サバやアジなどでは、温度管理が悪いとヒスタミンという食中毒の原因物質が増えることがあります。一度できたヒスタミンは、通常の加熱では取り除けません。魚が持つ毒も、加熱すれば無害になるとは限りません。魚種や温度管理に不安がある魚を、加熱すれば食べられると考えないでください。
臭いや見た目だけで安全を判断せず、釣れた直後から冷やし続けることが基本です。出発前に氷とクーラーを準備し、無理なく冷やせる量だけ持ち帰りましょう。


